Killing Time 2nd

備忘録、日々の徒然想いを残します。

見舞い 6/25

昨晩から降る雨は早々に上がり、雲の切れ目から陽射しも射し出した。

先週の見舞いで母が食事を拒否することが度々続いていることを思い出し、昼食前に見舞いに行くことした。午前中には行きたく支度をすると嫁さんも行くという。自分が見舞いに行くのが心配なのかもしれない。

午前中10時中に家を出たが道は混んでいてなかなか進まない。病院の昼食は12時半からなので時間の余裕はあったが落ち使い無い。見舞いの帰りには義父宅によって調子の悪いPCの面倒を見ることにもなっていたのでそのことも気になっていた。

12時前に病院着、受付で面会票を書いてエレベータに乗るときに12時を回っていた。

見舞い 6/27

病院の受付に書類を提出するため、短時間のつもりでバスで母の病院に行く。

はじめは受付に行ってそのまま帰ろうかとも思ったのだが、バスの時間まで時間が40分も空いていたのでそのまま病棟まで行って見舞いをする。

ナースステーションで看護師さんから母の状態を聞く。食事は、相変わらずなかなか一回呼んだだけでは食卓まで出て来てくれないそうだ。が時間をおいて声をかけて食事はするようだ。只機嫌が悪い時もまだあり、食事を半分しかとらない時もあるそう。今朝、風呂に入ってくれたようだ。これは良かった。2、3週ぶりだろうか。後に母に聞くと風呂には入っていないと言っていたが。

母は病床の天井を見ながら何かを言っているようだった。しかし音は聞こえない。カーテンの隙間からこんにちはと声をかけたが、こちらのことがわからないようだった。ベッドの脇に立ち手を握ってこんにちはというと理解してくれたようだ。しかし自分が息子であるとまでは分からないようだ。母の口から固有名詞はすっかり消えてしまった。

唐突に開口一番母は“泣いてばかりいてごめんなさい”という。今泣いていたというのだ。泪は見当たらない。いつもの窓際に行こうと声をかける。寝ていた母だが素直に起き上がり上履きを履いてくれた。病室の他の患者は皆寝ているようだった。そのまま二人でここで話をすると五月蠅いかと思った。病室を出て、ナースステーションの前を横切り北側の窓辺に行く。この日も椅子は空いていた。窓の外は梅雨空の合間に薄日が差すむしむしとした午后。病院内は空調が効いてすっきりとして汗ばむことはない。

“泣いてたの?”とぼく。

“そう、大人なのに駄目ね。泣いてばかりじゃ駄目なのに”と母。泣いた理由は話してくれなかった。理由なんかなかったのかもしれない。

また母をiPhoneで撮影した。嫁さんが一緒なら嫁さんと話をしているところを横から撮影するのだが、一対一なので正面から撮ることになる。

“あたしは写真は嫌いなの”いつも通り母の言葉。

“まぁ、そういわず、スマイル、スマイル”とぼく。

何とか母の笑顔を撮りたいがなかなか上手くいかず。苦笑いがやっと撮れた。

午前中風呂に入ったお蔭か髪の毛が綺麗にとかされていた。ここ最近見舞いに行くと母の髪の毛にブラシするのが恒例になっていたが、この日は必要なかった。それとこの日は終始ご機嫌が良いようで表情が柔らかであった。少し救われた気がした。

見舞い 6/19

午後2時過ぎ一人で母の見舞い。

病棟の2重鍵を開け、ナースステーションを見るも誰もいない。面会票をいつもどうしようか迷う。ナースステーションの受付には面会票を入れる箱があるがその上に「職員に直接お渡しください」と書いてある。結局箱には入れず、周りの職員を探してうろうろすることになる。

看護師さんがこの日は直ぐに見つかった。昼食時の喧騒がひと段落し患者さんが個々の病室に戻る時間帯なのだ。ほとんどの患者さんは自分で病室には戻れない。

母の病室の前で看護師さんと会い、母の状態を聞いた。今週も風呂を拒んでいるという。ここのところずっと風呂には入っていない模様。食事も機嫌の悪いときは食べず、コップやプレートをひっくり返すこともあるという。自分にはにわかに信じがたい行動ではある。

母は病床で半覚半睡といった感じで横になっていた。視線は、目は開けているが見えていないようだった。「よっ」と声をかけて立てた膝に手で撫でてみる。すると母の意識が返ってきたようで僕のことに気が付いた。あぁ、と挨拶の手をベッドから挙げる。表情は穏やかで自分の訪問を喜んでくれている。さぁさぁ、起きて話をしましょうよ、と声をかけて起き上がるように促す。はじめはいやだよぉ、と言っていたが肩に手をかけ背中を抱えて起き上がってもらうと抵抗を諦めたのか自分で起きて上履きも自分で履いた。左手首に蒼い痣が出来ていた。何かにぶつけたのだろうか。

いつものテーブルに移動する。母の足取りはしっかりしている。梅雨の合間の陽射しが山の木々を照らしている。母は僕の格好をみて寒くないのかと聞いてきた。カレンダーを指さし6月19日であること、梅雨の真っ最中でその中で貴重な晴れであり外は暑いことを話す。そのことには母は答えず、今日は一緒に来る人は居ないの、独りなのと言う。妻と昨日、6月18日来たことを覚えているのだろうか。

この日は終始穏やかな表情だった。iPhoneで写真を撮ったときは、毎度ながら写真は嫌いだよと言いつつ柔和な表情はそのままだった。

18日に変えたばかりの上履きが濡れたように汚れていた。食べ物か。トイレで排泄に失敗したのか気になった。

母に風呂のことを聞いた。風呂なんてここにはない、誰も誘ってくれないので風呂なんか入れないとのことだった。食事は毎回食べてるよという。風呂には入って下さいと約束してねと念を押し、指きりげんまん嘘ついたら針千本飲ますといって指きりをして面会を終えた。

見舞い 6/18

8時起床。

嫁さんは父の日前日のイベントで朝から出勤。お嬢たちもこの日は土曜日出勤。

午前中はいつもよりゆったりと過ごす。

11時、実家に行き、雨戸を開け空気の入れ替え。母の着替えを袋に詰めて午後1時過ぎ帰宅。すでに嫁さんはイベントを終えて帰っていた。帰宅の途中、昼食用に餃子専門店に寄り、持ち帰り用に餃子を焼いて貰い土産とする。ここは昨年の今頃は実家に行く際に母に夕食として餃子を買っていった店だった。夜、電話をしても居留守を使われてしまう母、途方に暮れて実家に行ったものだ。そんな思いがちらちらと浮かんでは消える。

帰宅して餃子と蕎麦で昼食を嫁さんと食べる。陽射しは強く、朝から父の日のイベントで汗だくになっていた嫁さんはすでにぐったり。ひとりで病院に見舞いに行くことにした。

強い紫外線が降り注ぐ。6月とはとても思えない。そんな中でも病院内は快適だ。母はベッドで横になっていた。近くに看護士さんがいたので様子を聞く。風呂に入るよう声掛けするが拒んでいるという。朝食も食べたり食べなかったり。この日の昼食は食べたようだ。風呂は先週も拒んでいると聞いたので3週ほど入っていないようだ。

いつもの通り4人部屋の入り口でノックをし、母に声をかけ起きてもらう。実家から持ってきた着替えに変えてもらう。今日は温和な表情だったが、頬に目やにがくっついていた。

数年前より二回りほど小さくなった母の背中。綺麗に洗濯したグレイのパーカーを着て、上履きも綺麗なものに履き替えてもらった。着替えたものは持ってきたユニクロの袋に移し替え、持ち帰って洗濯する。冷たく冷えたゼリーを持ってきて食べてもらうのが、ここ数カ月の恒例になっている。この日はミックスフルーツゼリー。病棟の中で、母の病室から反対側の窓際に移動して歩いて行く。病室は4人部屋で、他の患者さんに見せるのは悪いかと思い、窓際まで行って食べてもらっている。丸いテーブルに不似合いなスエード調のソファに座ってもらう。テーブルを腹にくっつけるように押して、こぼれても服に付かない様にする。ゼリーを慎重に開ける。ゼリーの淵は甘い汁が溢れやすいので、母にすぐ吸い取ってもらいながら蓋を剥がしていく。母は美味しい美味しいと食べる。プラスティックのスプーンの使い方は少し危なっかしい。フルーツの切り身が大きいまま入っているので飲み込みに注意しつつ見守る。病院の献立表には毎回デザートが付く。その中にゼリーもあるが、母はいつもこんなものは随分と食べてないと言い、そして美味しいと言って食べている。陽射しは高く強く、窓に差し込み影を残している。ゼリーを食べ終えた後は、その容器をコップ代わりにして水も飲んでもらう。母に風呂に入っていないことを言っても、そんなことは無い、誰も誘ってくれないの一点張り。風呂って言ったってゆっくりと入る風呂じゃない、水をちょろちょろ掛けるだけだし、自分は呼ばれないのだそうだ。烏の行水みたいなもんだろうが、体をお湯で拭いて貰うだけでも気持ちが良いものだよと何とか言いくるめる。次回は風呂のお誘いをされたら入ってねと、指切りげんまんを一緒に歌う。その時手の指の爪が伸びていて、その爪が汚れていることが気になった。次回は爪切りを持ってこようと思う。

病院を後にして、洗濯をするため実家に寄っていくか迷ったが、真っ直ぐに帰宅した。ジョギングの格好に着替えて洗濯物の入ったユニクロの袋を抱えてジョギングで実家に向かう。実家は先週思い切って庭の一部を伐採した。それは自分でも虐殺のような思いも感じるほどで咲き誇ったアジサイをばっさばっさと切り込んでいった。その時の枝はそのまま放置してあったので枯れて茶色に変色しつつあった。陽射しは未だ高く暑い。庭の手入れをしたいのだが、手際良く洗濯してジョギングを再開させたかったので控えた。然し実家を後に仕掛けた時、余りに気になって通路側の道の両脇の雑草をシャベルで掘り返しそこに昨年咲いたひまわりの種を蒔いておいた。

ジョギング再開。余り気力は残っていなかったが、鵠沼海岸まで走る。まだ、海岸線には海の家は設置途中。然しそこにいたのは真夏のようなビキニの女の子たち。未だ6月半ばだというのにBBQやビーチバレーをする人がいっぱいだった。

ありがとう和ちゃん―母の介護を終えて
野田 明宏
ブラス出版
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そうかもしれない

臨床心理士の方から推奨された書籍の読書。

ちょっとハードルが高く感じられたので後回しにしようかと思っていたのだが、図書館で借りる事が出来たので挑んでみた。

耕治人の“そうかもしれない”が推薦書なのだが、その短編を含んだアンソロジーの一冊。初めて図書館で目次をなぞった時は読み難そうな印象を持っていたが、読んでみると存外に読み易かった。淡々と主人公の入院中の出来事を綴ったもので、語彙もそれほど難しいものでなく、静かに滲みいってきた感じ。

壇一雄の作品をはじめ死を見つめる眼差しに圧倒された。

 

いのちのかたち (新・ちくま文学の森)

筑摩書房
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俺に似たひと

本を読んだ。

一冊シッカリと表紙から後書き、奥付、広告まで目を皿のようにして読んだのはいつ以来だろう。

臨床心理士の方から勧められた数本の中の一冊がこれ。他の推薦本も順次読んでいこうと思う。チラ見して、まずは読み易そうなこの本を手にした次第。

著者は内田樹氏らとともに言論活動されているのは知っていた。年齢は自分よりもかなり上の世代である。その言葉にはシンパシーを感じてはいたが、一方納得しかねるものもあった。然し文体が久しぶりの読書には好適だったように思う。

いつごろか著名人の方々が介護をしていること、その経験を包み隠さずメディアで話すようになった。昨今話題の都知事もその介護経験談*1を上梓し、それをきっかけのようにして都知事選挙、国政選挙に打って出た経緯があった*2。これらある種一ジャンルと化したかに思える介護経験談だが、この本は“俺”という一人称に語らせることで事実を淡々と記することを目指している。

一年半ほどの、自分にとっては羨ましいほど短い、介護経験だが、その時々に感じる不安や感想は同意できるものが多かったように思う。

“せん妄”の話が繰り返し出てくる。自分の母も自宅の二階に若い男が住んでいるという訴えを繰り返していた。実家の周り一番の古株のご近所住民が母に悪さをしている話が絶えなかった。しかし母の場合は幻視は必ずしもなく、被害妄想の故だったのだろうと思い至った。認知機能の低下の中、独りの生活で得も言われぬ不安から被害妄想を膨らましていったのだと思う。

“疾病利得”という言葉も印象的。内田樹氏は日米関係の政治的な矛盾を表現した、いささかイデオロギー臭のする言葉として発しているが、その意味は介護においてはいろいろなことを想起させる。

最終盤、俺の父は屍となって帰還する。その際に、

結局、父親を救ったのは、せん妄と、死であった。

という一文で終わる。昨今、認知症にも生きる上で意味があるという専門家の解説には困惑してきた。いわく癌患者など終末期の恐怖、痛みへの自己防衛の一つだということらしい。せん妄を起こし、現実世界から解離して自らの精神崩壊に抗う、という言葉には当惑してしまう。そうまでして守らねばいられない“老い”とはなんなのか、それが生きることの最期に必要なことなのかと。

 

俺に似たひと
俺に似たひと
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平川 克美
医学書院
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*1:週刊文春によると、それが本当であったのかさえ親族から疑義が出ている訳であるが。

*2:厚生労働大臣、都知事にまでなるのだから凄い出世だ。

慣らし出社5日目

ここ数日の初夏の陽射しは影をひそめ、どんよりとした曇り空。

7:55湘南ライナー、8:50出社。

未だアカウントのロック解除がされていない。メールアドレスも無くなってしまっている状態らしい。新規にメールアドレスを登録するとなるとアドレスが変更されてしまうのは困るので、今まで使用していたものを復活させるように依頼している。社内の電話帳で自分の名前を検索してみたが出てこなかった。データが削除されているのだ。

午前10時、人事部と面談。調子を聞かれた。またこの数ヶ月の臨床心理士との面談での気付きについて問われたが、急なことでまごついてしまった。人事は不安を持ったかもしれない。

正午、予定通り退社。陽射しはないが暑い。

躯に疲労を感じる。昨日までのジョギングによる肉体的なもの、今朝の早朝覚醒による寝不足、そして意識はないが慣らし出社での緊張などがあるだろうと思う。

ジョギングは控えることにして、自転車で海岸線を走る。お昼を食べるタイミングを失っていたので遅くなったがマクドナルドでビッグマックを頬張る。

雨の雰囲気を感じながら帰宅。