Killing Time 2nd

備忘録、日々の徒然想いを残します。

評決

昨晩深夜ムービーチャンネルで視聴。1982年のシドニー・ルメット監督の作品。ポール・ニューマンはこのときオスカー落選でもう無理ではといわれたが、その後ハスラー2で遂にオスカー主演男優賞受賞。でもこっちのほうが地味ではあるが良い。全体に浮かれたところのない抑制された画と音楽、街並み(坂を多用したロケが秀逸)、そしてシャーロット・ランプリングの陰。

朝から晩まで片時もアルコールを放さない落ちぶれた弁護士が示談を前提にした弁護を引き受ける。医療ミスで植物人間となってしまった原告の病室を訪れ、ポラロイドカメラに彼女が映し出されたとき、小さな正義が目覚めた。このときの病室に響く人工呼吸器の機械音、ポラロイドカメラがフイルムを吐き出すモーター音、そして原告である彼女を直接はカメラは捉えず、フイルムに浮き上がる姿のみ見せる静かな悲しみ。

半場でスパイでもあるシャーロット・ランプリングは、公判前に証人が消え万策尽いえたと憔悴するポール・ニューマンをなじり、追い詰める。それは彼女の本心からの激励にほかならない。しかし彼は過呼吸気味になり洗面所に逃げ込んでしまう。この辺り狼狽するシーンも描写もいい。

ラスト、電話はなり続け、しかし戸惑いながらも電話に出ないシーンもラブストーリーとして面白かった。当時電話は取るべき、あるいはもう一つエピソードを入れたほうが良い、あれでは尻切れトンボという話もあったが、やはりアレは出ないほうが良かったのだ。そのとき手にしていたのはアルコールではなくコーヒーカップだった。