Killing Time 2nd

備忘録、日々の徒然想いを残します。

歌わせたい男たち

昨日10日、湘南台文化センターにて。

二兎社公演、永井愛作演出。戸田恵子主演、大谷亮介、小山萌子中上雅巳近藤芳正が共演。内容は、

ある高校の卒業式の朝、「君が代」伴奏を拒み、たてこもってしまった音楽教師。困り果てる周りの人間…人々が思っている真実の心の内を笑いをベースにしながら、描き出す。

というもの。都立高校で昨今起きている石原都政の教育現場への国家斉唱の強制化をコメディタッチで描いているのだが、いまひとつ頷くことが出来なかったのが本心。

内心の自由を主張することに異議を唱えることは全くないのだけれど、現状の高校、教育現場と石原都政のようなやりかたを多くの人が受け入れてしまっている背景には何があるのかも示して欲しかった。

決してそれはお金のため、明日の仕事をえるために信条を変え、押し黙っているわけではないだろう。ぼくの経験、見聞きした範囲ではこの劇中の教師、近藤芳正役のような教師の少なからずが生徒指導力不足だったり、勤務状況が悪かったり(遅刻、授業の遅延など)して問題視されていると感じているからだ。言うこと主張することは、全く正しいと感じられるしそうあるべき、なのだが実際この数年の状況はそうはなっていない。こういったことがすべてその教師らだけにあるとは言わないがそういった教師側への批判が、石原都政の教育現場への介入を許す人びとの心情の根底にあるのではないだろうか。

これは教育現場だけの話ではなく、マスコミ、言論への政治や司法の介入を見過ごすような状況を作っていると思える。自ら襟を正せない状況が招いたものであるという内省がないと受け入れがたいと感じている。

とまれ、戸田恵子の生歌を聞けたり、切れた近藤芳正、キレのある身のこなしと長い手足の中上雅巳らとても良いものを観たのでこの点大満足だった。